// 4. Rain_Rain_Rain





 雨が来る。


 辺りに満ちる、独特の蒸した感じ。
 やがて雨粒が、ぽつぽつと世界を濡らし始める。

 雨が天の恵みと称されていたのは、もう、はるか昔の話。
 油紙や布なんかでしのげていたのも、だいぶ前のこと。

 じゅうじゅうと音を立てて、雨が外壁を溶かす。
 今やどの建材も自己修復機能を持ってはいるけれど、その速度が雨による侵食に追いつくには、まだ開発力が足りていない。

 雨は、全てを溶かす。
 石も花も、鳥も人も。

 全てを。

 即死、全滅、というわけではない。
 至って穏やかなスピードで、危機感すら抱かせないほど、じわじわと。

 だからこそ人は、雨上がりの空を見上げ、溶けた場所で次に何を作ろうかと考えることができる。
 飽きもせず、日々。

 そうして人は生きてきた。
 そうして人は発展してきた。

 雨が溶かし、人が作る。
 ――これが、世界を成り立たせるサイクル。


 |  | 

SFトップに戻る  WMトップに戻る